日本の戸籍は稀な制度で、世界では旧植民地の韓国と台湾に類似の制度があるのみです。
前回お話ししたように、銀行や不動産の相続手続の際には原則として法定相続人全員の合意がなければならず、故人の相続人であることを戸籍で証明します。
故人に相続人が何人いるかの証明は、故人の出生時の戸籍つまり故人の両親の戸籍まで遡ることになりますが、昔の戸籍は何代か同じ戸籍に入っているので、故人の曾祖父母の戸籍など100年近くから130年以上遡らなければ証明ができないことも少なくありません。
このように相続手続のために昔の戸籍を探すのは億劫ですが、一方で自分のルーツを知る良い機会にもなります。
手続に必要な戸籍よりさらに昔の戸籍を遡ると、生年月日の記載ベースでおよそ200年前の江戸時代末期の祖先まで遡ることができ、「文化」や「文政」といった時代の祖先まで登場します。
明治から昭和初期にかけては、子供が十数人というのが一般的な家庭であり、現代のような便利な世の中でないにも関わらず、昔の人は随分苦労して子育てをしたのでしょう。
膨大な数の祖先が記載された戸籍を見ながら、医療体制が整っていない昔において、このうちの1人でも欠けていたら自分が存在していなかったということに思いをはせると感慨深いものです。
本籍地の記載も興味深いもので、古い戸籍を見ると、「石狩國上川郡旭川村」などを記載されています。私は東京出身ですから、祖先の戸籍には「東京市」や「東京府」といった記載がみられます。
古い戸籍は一定期間経過後に破棄されますので、興味のある方は早めに取得しておきましょう。
戸籍には、父母の氏名など親族関係のほか、出生日や婚姻届の受理日などが記載されます。
婚姻などで新たな戸籍を編成すると、受理した市町村名も記載されます。婚姻届は本籍地以外の市町村役場に提出することも可能で、例えば本籍地東京都、住所地旭川市の私が那覇市で届け出た場合、「受理者 沖縄県那覇市長」と記載されますので、新婚旅行の良い思い出になるかもしれません。海外の日本大使館や領事館に提出すればその旨記載されますが、事前に現地公的機関発行の婚姻証明書が必要などハードルはちょっと高いです。
一般の方には戸籍はなじみが薄いかもしれませんが、何かの人生の節目のときに自分の戸籍を調査して家系図などを作ってみると、意外におもしろいものです。
05
2016