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第1回 こんなに複雑 !? 相続のおはなし 2014年4月号掲載

 みなさま、はじめまして。
 こちらでは、暮らしに身近な手続きや法律知識についてお話しいたします。
 第1回目はこんなに複雑 !? 相続のおはなしです。

 夫に万一のことがあると夫名義の財産はすべて妻が相続する、と考えがちですが、法律上はそうではありません。
 夫に子がいれば妻と子が相続しますが、子がいない場合には妻に加えて夫の両親も相続人となります。夫の両親もすでに他界している場合には、夫の兄弟姉妹が相続人となります。そして、その兄弟姉妹のなかにすでに他界している人がいる場合には、その兄弟姉妹の子、つまり夫から見れば甥や姪も相続人となります。

 夫名義の銀行預金は、相続人全員の直筆の署名と捺印、印鑑証明書を添付して手続きをしなければ、口座は凍結され預金を一切引き出すことができません。

 夫の兄弟姉妹のみならず甥や姪の連絡先まですべて把握している妻は少なく、明治や大正生まれであれば兄弟姉妹が10~15人くらいいた時代ですから、甥や姪も含めると相続人が20~30人にも膨れ上がってしまい、顔も名前も知らない者同士が相続人になることが少なくありません。

 子がいなければ妻がすべて相続すると思っていたものが、名前も住所も知らない相続人数十人を莫大な時間と費用をかけて探して協力をお願いしなければならないなどという事態が普通に起こり得るのです。

 また、夫の「子」には前妻または前々妻との子も含まれます。したがって、後妻は通常あまり関わりたくのない前妻らと夫の間の子も探さなければなりません。

 それでも相続人全員の所在を探し協力してもらえればいいですが、海外に行ってしまったり、病院や施設に入って連絡が取れないことのほか、認知症などにより判断能力がなかったり、連絡が取れても「知らない人だから関係ない」と協力してもらえず手続きが進まないこともあります。

 こういった複雑な手続きを解消するのが遺言書です。

 あらかじめ法的に有効な遺言書を作成しておけば、他の相続人を探し回る必要がなくなります。遺言書は「お金がある人が作るもの」ではなく、相続に余計なお金や不安をかけないために作るものです。
 また、たとえ故人と一度も会ったことのない相続人であっても、その相続人が相続したいと主張すれば法律上決まった割合に応じて遺産を引き渡さなければなりません。故人の遺産が多ければ多いほど、他の相続人に渡さなければならないお金も多くなり、その額が数千万円などということも多々あります。 このような場合でも、遺言書で相続する人や遺贈を受ける人を指定しておけば、余計な出費を大幅に減らすことができます。

 遺言書は専門書やインターネットでも参考にすることができますが、遺言者の実情に合わせて作成しないと、法律上無効とされたり、遺言書がかえって紛争の火種になることもありますので、専門家に相談しながら作成しておけば、安心して長生きできることでしょう。
第2回 実はおもしろい、戸籍のおはなし 2014年6月号掲載 | Home | 北海道音威子府村の黒いそば

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