納得のいく説明ができる医師こそ「名医」の条件 2016年6月号掲載

第14回目は治療を受ける際の心構えについてのお話しです。

 「インフォームド・コンセント(十分な説明と納得の上での合意)」という言葉が一般にも普及してから四半世紀がたとうとしています。インフォームド・コンセントは特に医療の現場で患者の権利として重要視され、患者は医師から治療内容について十分に説明を受けた上で理解し、納得してから治療を受け入れるという概念です。これが提唱されたのは1980年代だと記憶していますが、万一のときでも病院は責任を取らない旨の誓約書などの書類が増えただけという印象です。旧態依然の横柄な開業医の中には潰れる医院もありますが、医大など総合病院ではいまだに患者に怒鳴り散らしたり罵声を浴びせる医師が少なくありません。

 以前、当職に遺言の作成を依頼した高齢のお客様は大変気落ちしていました。近所の歯科医に義歯の調整をお願いしたところ、麻酔で知らないうちに健康な歯まですべて切断され、新たに義歯を作られてしまったとのことです。その治療の痛みはそれから四六時中続き、あまりの痛みとストレスで癌を発症し余命宣告を受けました。歯は体の器官の中では非常に小さいものの、いったん痛み出すと食事をはじめ日常生活に大きな支障をきたします。治療と癌との因果関係は明らかではありませんが、人生で最大の失敗と言う本人の後悔は、体を蝕むほどの苦痛であったに違いありません。そして遺言書を作成後、ちょうど1か月で急逝しました。

 本人の依頼を受けて歯科医にカルテや画像の開示請求をしましたが、「開示するかしないかは院長が決める」「(患者本人が)道で落としたら個人情報が漏洩する」などという奇天烈な持論を展開しました。

 昨今、「病院で殺される」などというセンセーショナルな本が出版されていますが、自らの利益のために患者の命を軽視し、不要な治療を行なったり薬漬けにする一部の医師の存在が明らかになっています。

 モノであれば修理や買い替えがききますが、命は修復が困難で代替性がありません。医療過誤による身体的及び精神的な苦痛は一生続きますので、リスクも含めて事前にきちんと説明をしてもらい、納得の上で治療を進めるべきです。これからは患者が説明を受ける権利というより説明を求める義務といえるでしょう。もっとも、治癒できるかどうかは医師よりも患者本人の気力に大きく関係していることを忘れるべきではありません。

 人生の最後で大きな後悔と医師への恨みを語りながら亡くなったお客様の顔を忘れることはできません。しかしながら、当職もお客様の人生設計に大きく影響を与える手続きを行うことも多々あることから、十分な説明と納得した上での合意が得られるよう、今後も励んでいきたいものです。

第13回 「また来たい」と思われる接客を 2016年4月号掲載

 第13回目は印象に残る接客についてお話しします。

 旭川市内でも毎月のように魅力的な飲食店がオープンしています。その一方でひっそりと店をたたむ風景も日常茶飯事となっています。実際に、飲食店は開業しやすいものの、1~2年でその半数が廃業すると言われ、市内では数か月、半年程度で潰れた店舗も珍しくありません。

 昔は大きな店、有名な店が圧倒的な集客力を持っていましたが、個性を重視する時代に代わり、飲食店を探す方法も従来の広告やガイドブックから、ネットのクチコミサイトに移行しています。
 
 ところで、みなさんは1年前に入ったお店の味を覚えているでしょうか。
 ほとんどの方は他のお店と比較できるほどの印象は薄れていると思います。食べているときは感動したとしても、多くの場合味についてはすぐに忘れてしまいます。
 一方で、店員の接客については何年たっても覚えているものです。実際に、クチコミサイトで低く評価されている店舗のクチコミを読むと、味や値段、内外装の悪さよりも店員の接客のまずさが評価されていることが多いです。

 多くの飲食店において接客の時間は、来店時、注文時、会計時のわずか1分ほどです。
 では、その1分間だけお客さんが感動できる接客ができないでしょうか。1分であれば手間もかかりませんし、我慢するほどの時間でもないでしょう。できれば天気などありきたりの話題ではなくて、お客さんの服装や持ち物などから地元の方か観光客かビジネスパーソンか判断し、お客さんごとに違った声掛けをするとよいでしょう。

 来店時に忙しかったりしてうまく接客できないとしてもさほど印象に残りませんが、帰り際に悪い印象を残すと致命的です。せっかくおいしい料理をいただいても、挨拶も見送りもないお店にまた来たいとは思いません。

 先日、廃止直前の寝台特急カシオペア号に札幌駅から乗車しました。
 在来線特有の線路のつなぎ目の音と心地よい揺れを堪能しましたが、上野駅到着直後にJR東日本の社員4名ほどが車内に乗り込み、到着後数十秒もたたない私たち数名の乗客に対して、「作業があるから早く出て行ってください!」と繰り返し大声で怒鳴り散らしました。列車は66分遅れで到着したので急ぐ必要性は理解できますが、その言葉遣いと態度に17時間もの夢心地の旅も最後で台無しです。

 飲食店でも同じように、次回も来てくれるかは帰り際にかける店員の一言、一瞬の表情で決まるかもしれません。
 新規顧客を獲得するためには相当経費が掛かりますが、リピーターを増やす方はさほど経費は掛かりませんし、後者の方がはるかに利益になります。声掛けや表情は費用も掛かりませんから、ぜひ後ろ髪引かれるような接客を目指していただきたいものです。

専門家をうまく活用しましょう 2016年2月号掲載

 第12回目は専門家を活用するメリットについてお話しします。

 私たちは、市役所や法務局、税務署、裁判所、銀行、保険会社などを利用し手続きをしなければならないときがありますが、時によってその手続きは非常に煩雑になります。
 最近は本やインターネットで手続方法の情報を得ることができますが、それでも相続や交通事故などはお一人お一人独自の手続きであり、手続き方法も異なることから、一般例として掲載されている情報では役に立ちません。

 また、遺言書もご自身で本などを参考に作成される方もいますが、そんなに難しい書類ではないにも関わらず、お客様の作成した遺言書を拝見する限り、9割以上は法律上無効です。平均して数千万円の遺産を家族に遺すのに、市販の書籍やネットの情報では何とも心許ないものです。

 一方、専門家に依頼するメリットとして、ひとつは正確性が挙げられます。前述の遺言書のように1か所でも誤りがあるとまったく無駄になってしまうこともあるほか、許認可など誤りを訂正すれば、その分費用がかさみます。

 2つ目のメリットとして、時間を有効に活用できる点が挙げられます。会社の設立など本やネットの情報で手続きをすることもできますが、他人でもできる事務手続きを社長自身が行うよりも、その時間を起業後のための営業や人脈作りに利用したほうが良いでしょう。

 3つ目のメリットは、専門家の持つネットワークを利用できることです。会社法務などを自分で手続きをすれば何の人脈も得られませんが、専門家に相談することにより、専門家の持つ膨大な人脈を利用し、新たな顧客獲得に繋がることは多々あります。
 ですから、ネットの格安専門家より多少値段が高くても人脈と経験を持つ身近な専門家に依頼したほうが、会社にとってはるかに利益になるのです。

 ご自身で何回も役所を往復したり、いろいろな本を購入して自力で手続したので費用が安く済んだと思っている方も、本人は気付かなくても専門家から見ると非常に大きな損をしているという方をたくさん見かけます。わずか数千円の相談料を惜しんだため、数千万円の損をしている方は少なくないのです。

 重要な手続きをする前には、単なる有資格者ではなく、必ず経験豊富な専門家に相談することをお勧めします。

第11回 会社の定款をつくろう 2015年12月号掲載

 第11回目は会社の設立の際に決める定款についてご案内いたします。

 年始や年度初めに向けて会社を設立したり、個人事業から法人へ移行する方が増えてきますが、今回は会社の「決めごと」である定款についてお話しいたします。

 定款とは会社の概要や基本的な規則を定めた書類で、次の事項を記載します。
 最初に会社の名前つまり商号を決めます。商号には漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビア数字などが使用できます。市内外にある他社と同じ社名を用いることもできますが、誤認されたり当該他社から訴えられる可能性もありますから、なるべくオリジナルの社名にしましょう。また、株式会社の場合は、社名の前か後に必ず「株式会社」という文字を入れなければなりません。いわゆる前株・後株と呼ばれるものですが、昔はほとんどが後株でしたが、現在では前株の社名の方が多いようです。

 次に事業目的を決めます。
 事業目的は事業の概要を記載したもので、取引先や行政機関、金融機関の目に触れるところですから、「その会社がどんな事業をしているのか」が分かるように記載します。ただし法的にも正確な記載が必要ですから、単に「介護事業」とではなく、具体的に「介護保険法に基づく介護予防訪問介護事業」のように正確に記載します。ここで不正確な記載があると、後から3万円の税金を支払って定款の変更を届けなければなりません。実際に始める事業に関わらず将来的に考え得る事業や、異業種をいくつ組み合わせても構いませんが、よほど大企業でもない限り定款に20項目も30項目も目的を並べるのは見栄えがよくありません。

 さらに、本店所在地を決めます。これは自宅でも構いませんが、移転したときは3万円または6万円の税金を支払って変更しなければなりませんので、短期契約の賃貸物件などは注意が必要です。

 そして、会社の機関設計つまり取締役を何人にするか、取締役会を設置するかどうかを決めます。取締役会を設置する場合は監査役も必要です。

 それから、資本金を決めます。1株あたりいくらにするか、設立時にいくら出資するかを決めます。1円でも設立できますし、自動車などの現物を出資することもできますが、あまりに少ない資本金は恥ずかしいものです。特に金融機関から融資を受ける予定の場合には、資本金が少ないと後で増資を求められます。

 このほかにも、定款に記載すべき事項はいくつかありますが、これから設立をご検討の方は、書籍やネットでも情報はあるものの、地域によって記載のルールが異なることも少なくありませんので、後で変更の必要がないように専門家と相談しながら前もって検討なさってください。

第10回 安心してイベントを楽しむために。 2015年10月号掲載

第10回目はイベントの主催者と、参加する方についてのお話しです。

 秋は天候も安定するため外出しやすく農産物の収穫を迎えることもあり、各地で様々なイベントが開催されます。近年は個人や任意団体がイベントを主催し、プロではない出店者も増えています。主婦や会社員が趣味や副業としてハンドメイド製品を制作して販売したり、アロマやマッサージなどの施術を行うこともあり、実店舗を持たない作家から購入したりサービスの提供を受けることができるイベントは大盛況となっています。

 一方で考慮すべき重要な事項もあります。
 主催者や出店者は来場者に販売する商品や提供するサービスによって客が損害を受けた場合、損害賠償責任があります。無料または安価だから責任を免れるわけではありません。
 客の立場から見れば、安価なフリーマーケットで施術を受け骨折したのだから後遺症が残ってもやむを得ない、では納得しないでしょう。特に食べ物など人の体に入るもの、マッサージなど人の体に触れるものは十分な注意が必要です。全国で多くの被害者が発生した通販業者の石鹸に含まれる成分によるアレルギー、化粧品会社による白斑病などは記憶に新しいでしょう。
 客の治療代や入通院費だけでなく、治療中の休業補償や後遺症による将来の逸失利益についても賠償しなければならず、骨にひびを入れただけでも数千万円の賠償となることがあります。

 プロの出店者の場合、通常は賠償責任保険に加入していますが、主婦や会社員の場合には保険に加入している方は皆無でしょう。そのようなケースで事故に遭った場合、出店者は多額の賠償責任を負うだけでなく、もし出店者に賠償金を払う資力がない場合には、客は泣き寝入りをするしかありません。ですから、客の立場としても、その出店者が信頼できるかどうか見極めなければなりません。

 このようなことから、イベントの主催者は出店者の担保能力を確認してから出店を許可し、出店者も仮に販売予定額より保険料の方が高額だとしても、万一に備えて保険に加入することが必要です。

 なお、飲食物を提供、販売する場合には、それが一時的なイベントであったとしても、主催者及び出店者は保健所などの許認可や届出が必要な場合があり、個人が家庭の台所で調理した食品を販売することは法的に規制があります。

 上記のとおり、主催者や出店者には法的な義務があること、客としての来場者は受けた損害について自己責任となる場合があることを十分に理解して、イベントに出店、参加することが求められます。

 みなさんが秋の行楽のシーズンに各地のイベントに参加される際には、安心して楽しめるよう願っています。